ギャラリー

県立菅原園

設計趣旨

県立菅原園は昭和46年1月、奈良県より社会福祉法人大倭安宿苑が受託して運営する重度身体障害者更生施設として出発し、昭和47年全国に先駆けて法制度化された身体障害者療護施設で、奈良県北部を中心としたエリアを管轄している。
改築にあたり、施設の利用状況・現状に対する意識調査などの実施により現状の問題点の把握に努め、現地建替えにより入所者に負担がかからない様、周辺施設・住宅にも配慮したプログラムとボリュームにしている。
敷地は傾斜した道路に接しているため、これまで入居者が自由に外出するには困難な点が多かったが、建物に地下を設けて傾斜の少ない道路側に出入し易くし、外部へのアプローチをバリアフリーとした。
施設は北側に管理部門・地域交流部門・通所A型のゾーンを設け、サービス関係を西側に配置することで 入居者のプライバシーと快適な環境を確保し、サービス動線も効率化させた。
外観は奈良の空気が感じられる建物として、社会に開かれたイメージを髣髴させる屋根の柔らかい形状や、 原風景の一つであり入居者の無垢な心の色にも通ずる漆喰調を用いることで、奈良らしい空気を引き出した。
喜怒哀楽、心の流れは自然のふれあい、人のふれあいによって生み出されてくる。自然とのふれあいに於いては、外部への視線が遮られない様に開口部を大きく設けた。
又、人のふれあいに於いては、生活の中心となる食事、リハビリなど交流の機会をより多く創り出せる様、建物の中心にレイアウトし、建物周囲の景色が望め、豊かな光のさす開放感のある空間としている。
人生は時の流れであると共に、季節にもなぞられる事ができる。 そうした人生という大きな時間の流れを感じてもらいたい。菅原園は、ここで生活している人にとって人生の拠点となる施設である。 一年をサイクルとして移り行く自然や体のリズムを季節の変化と共に味わえるようにすることが必要であると考える。
植栽については季節感が味わえる様、建物から樹木への視線に配慮した。生きる喜びを感じてもらえるために。

所在地奈良市大倭町
用途身体障害者更生援護施設(療護施設)
建築主奈良県
構造・規模RC造 地上2階・地下1階 建築面積2,783.39平方メートル
竣工2006年02月