ギャラリー

天理大学総合体育館

設計趣旨

計画地は天理駅から西へ約400m、天理大学体育学部キャンパス内の東端に位置する。
既設体育館の老朽・狭隘化、また大学創立80周年記念事業・体育学部開設50周年事業の一環として、敷地東側を拡張する形で、施設利用しながらの建替え計画である。

プログラムとして1期工事をメインアリーナ・体操場・階段ホール、2期工事をサブアリーナ・屋内温水プール・トレーニング場と共用管理部分の大きく7つのマッスで構成される。
連続する東西の軸線を基調に南側のボリュームを抑え、周辺に対して威圧感の軽減を図るとともに各ゾーンの壁面が光を浴びる明るい施設を目指した。
総合体育館という大きなボリュームに対しバランス良く分節化を図り、細かなディティールに注視しながら陰影による深みと繊細さを表現し、スタイリッシュにまとめるように努めた。

建築地周辺は、今後発展してゆくであろう新興都市的な部分がみられ、新たな創出的現在都市として再生していく役割を担うべく一石を投じるデザインを試みた。
施設の大きさをリズミカルで美しいものにするために「連続性」「浮遊性」「透明性」など未来志向の流れを表現し、東・西面の閉じた白壁は対比によりそれらをよりいっそう強調させる。
大空を切取る2枚の曲面屋根は大鵬の翼をイメージし、相互扶助の精神を示すとともにデザインテーマである「飛翔」を表現する。
また、重なりながら流れる水平軸に対して直交するガラスボックスの挿入はマッシブなボリュームの中に、軽さとしてのシンボル性を強調する。

「飛翔」のごとく天理大学から世界に向かって羽ばたき、スポーツスピリットからの向上心をもって未来に雄飛する学生たちの学び舎として心に残る施設であり続けることを願っている。


■スマート化に関わる要素

《周辺環境への適応》
・接道や隣接施設に対して十分なバッファゾーンと植栽を設け、ゆとりある配置計画とした。
・かつては塀で囲まれ樹木がうっそうと茂っていた閉鎖的な場に、開放性を持たせるため、境界沿いには安全面・防犯面に配慮しながらも、あえて塀を設けず、見通し、風通しの良い軽快な柵を設えて外からも施設内の活動が感じられる構成とした。
・建物壁面をガラス張りとし、特に正門横のトレーニング場については、内から外・外から内の視覚的な関係性を意識し、学生の活発な活動によりその場のアクティビティが高まり、キャンパス全体の空気が街ににじみ出るような効果をねらった。

《自然エネルギーの活用》
・夏場は、施設横に設けた井戸から得られる井水を建物床下で噴霧させて、冷気を作りながら、一方で太陽熱により暖められた屋根面の暖気との温度差により、空間内に床から天井への上昇気流を起こす。このシステムで、アリーナ大空間の室内環境の温度を外気温より2~3℃低くすることができる。また、冬場は天井裏の暖気を床下へ送り込み、床面温度を上昇させる。このような、水・熱・風といった自然エネルギーを享受したパッシブ空調システムの採用により、室内環境の改善と共に地球環境への配慮とランニングコストの軽減を図っている。

所在地奈良県天理市
用途大学の体育館・水泳場
建築主学校法人天理大学
構造・規模RC造 一部S造 地上2階 延床面積6,770.55平方メートル
竣工2005年06月
備考第12回奈良県景観調和デザイン賞 知事賞受賞